
人には多かれ少なかれ体臭があります。清潔か不潔かということとは無関係です。皮膚には汗を出す器官として2種類の汗腺があります。エクリン汗腺とアポクリン汗腺です。エクリン汗腺は身体中に分布し、体温を調節するために発汗します。
一方、アポクリン汗腺は腋の下や乳首、陰部などの特定の部位に分布しています。アポクリン汗腺から分泌する汗には、脂肪や鉄分、アンモ二アなど、 体の老廃物が含まれます。アポクリン汗はそもそも異性を引きつけるフェロモン様の物質で、固有の体臭を発生させています。ただ、これが細菌によって分解され、独特なにおいを放つ場合があります。これが、わきがの原因です。
わきがはアポクリン汗腺の量が通常よりも多く、働きが活発なために起こります。以前は汗腺自体を切開して除去する方法が一般的でした。確実ではありますが、傷あとが残り、現在ではほとんど行われていません。発汗を命令する交感神経を破壊してしまう交感神経遮断手術が行われます。
これと並んで、ボトックスによるわきが・多汗症の治療もよく行われるようになりました。
交感神経の末端で発汗を促しているのが、アセチルコリンという神経伝達物質なのです。通常、交感神経末端から分泌されるのはアドレナリンなのですが、汗腺へ分泌している交感神経からは例外的にアセチルコリンが分泌されるのだそうです。ですから、アセチルコリンを抑制するボツリヌス菌毒素を多汗症やわきがの治療に応用しようと考えるのは当然のことといえます。
汗やニオイの悩みを解決するためにワキの下にボトックスを注射します。痛みもほとんどなく、治療時間は5〜10分程度ですみます。従来のワキガ治療はメスを使うため、傷が残ったりしましたが、ボトックスでは注射器の針あとが一時的に残るだけです。治療当日にシャワーや入浴なども大丈夫です。
効果は約4〜6ヶ月間継続します。注射の部位の工夫で半年以上持続すると指摘されるお医者さまもおられます。さらには1回の注射で、完治してしまった患者さんの例を挙げられる先生もおられます。ボトックスは本来、一過性の治療で、4〜6ヶ月ごとに注射を続けなければなりません。それが完治してしまうのは、精神性発汗の原因である「予期不安」がなくなったからだと思われます。つまり、ボトックスにはメンタルな治療効果も期待できるということです。
しかし、重度のわきがの場合は治療の効果はあまり見込めないので、アポクリン汗腺を取り除く外科手術や交感神経遮断手術が必要なようです。